千葉県佐倉市の山間部、DIC総合研究所のすぐそばに建つDIC川村記念美術館。その名の通り、印刷インキや顔料のメーカーとして知られるDICが運営する、企業主導の美術館です。
車でないとアクセスしにくい立地ということもあり、これまで訪れる機会がありませんでしたが、東京駅から高速バスが出ていると知って足を運んできました。

*1:DIC川村記念美術館のHPには建築やサインについても詳しく掲載されており、本情報も同HPによる(URL:https://kawamura-museum.dic.co.jp/architecture/sign/)








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美術館の設計を手がけた海老原一郎さんは、DIC(当時の社名は大日本インキ化学工業)の二代目社長であり、この美術館の設立者でもある川村勝巳さんと親しい友人関係にあったそう。美術館の竣工は1990年ですが、海老原さんはこの直後に逝去されており、本作はいわゆる遺作にあたるようです。
これまで海老原さんの作品を訪ねたことはありませんでしたが、彼は前川國男さんと同じ1905年生まれで、モダニズムの建築家として知られていたそう。ただ、このDIC川村記念美術館は、前川さんの建築とは全く異なる佇まいを見せていて、同時代にこうした建築家もいたのだと、当時の建築の広がりを改めて感じられる体験でした。
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千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館は、2025年3月31日をもって運営終了となりました。当初は2025年1月下旬からの休館を予定していたようですが、休館発表後に多くの来館があったようで2ヶ月ほど延期されたようで、多くの人に愛されていたことが伺えます。
BCS賞も受賞した海老原さんの代表作であり、自然に囲まれた気持ちの良い美術館ということもあって大変残念ではありますが、今後の活用方法に期待させて頂きたいと思います。35年間、お疲れ様でした。
なお、今後は一部縮小されるものの、庭園の開放は継続されるようです。美術館としての活動も国際文化会館との協業が発表されており、こちらも期待させて頂きたいと思います。
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DIC川村記念美術館(閉館)
[所在地]千葉県佐倉市坂戸631
[用途]美術館
[設計]海老原建築設計事務所(建築)
[施工]竹中工務店(建築)
[竣工]1990年
[URL]https://kawamura-museum.dic.co.jp
[参考書籍等]
・『新建築1990年7月号』新建築社、1990