2022年から2023年へと年が明けたこの機会に、この1年間でみた展覧会を振り返ってみます。昨年は休館が続いていた美術館がすっかり再開したこともあり、一都三県に限ってみても訪ねた展覧会は40以上。ダミアン・ハーストやゲルハルト・リヒター、岡本太郎など、国内外の有名作家の展覧会を多くみることができた1年でした。
01 ミケル・バルセロ展
スペインの現代美術家、ミケル・バルセロ氏の作品を初期作から現在に至るまで総覧的にみることができた展覧会。この展覧会で目にするまで彼の作品を見たことはなかったのですが、調べたところによると日本国内の美術館では初の個展であったそう。遠くからみると平面にみえるキャンバスは様々な素材を用いて立体的に仕上げられ、絵画とも彫刻とも言える表現が印象に残りました。
ミケル・バルセロ展
[会期]2022年1月13日〜2022年3月25日
[会場]東京オペラシティアートギャラリー
02 project N 85 水戸部七絵
ミケル・バルセロ展と同時期に東京オペラシティアートギャラリーで開催されていた展覧会で、この1年間で強く印象に残ったうちの一つ。キャンバスに大量の絵具が盛られ、立体的に浮かび上がる絵画作品は、どこかバルセロの作品とも通ずるものも。廊下状のギャラリースペースに迫力ある多くの作品群が並べられ、濃密な空間を体験することができた展覧会でした。
project N 85 水戸部七絵
[会期]2022年1月13日〜2022年3月25日
[会場]東京オペラシティアートギャラリー
03 今がすべてだ! ー続・柿沼康二の挑戦状ー
書家であり現代美術家でもある柿沼康二さんの個展で、過去には2010年にもこの岡本太郎記念館で企画展を開催したそう。筆で描かれた文字や言葉で空間が埋め尽くされ、作品としてつくられた空間そのものの体験が印象に残りました。岡本太郎の作品モチーフも随所に。坂倉準三の設計したこの建築の空間を立体的に有効活用された展覧会。
今がすべてだ! ー続・柿沼康二の挑戦状ー
[会期]2021年11月18日〜2022年3月13日
[会場]岡本太郎記念館
04 ポストバブルの建築家展ーかたちが語るときーアジール・フロッタン復活プロジェクト
1960年代以降に生まれた35組の著名な建築家が、近年の代表的なプロジェクトを展示した展覧会。フランスで開催された企画展が一部更新され展示されたものだそうで、会場構成は建築家ユニットのアルファヴィルが手掛けていました。会場には、ル・コルビュジエらが改修に関与した船「アジール・フロッタン」の復活プロジェクトの展示も。この船の要素を原寸再現したものらしい、白い列柱の間を行き来しながらみて回る動線が印象に残る空間体験でした。
ポストバブルの建築家展
[会期]2022年1月12日〜2022年2月19日
[会場]BankART Station
05 ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
アメリカを拠点に活動する現代美術のアーティスト、ロニ・ホーン氏の個展。日本で行われる大規模な個展としては今回が初となるそうで、会場となったポーラ美術館でもここまで大規模な展覧会が行われることはあまりないそう。別の記事にも書きましたが、美術館の空間がいかんなく使われた展示構成が印象に残りました。ポーラ美術館の訪問は個人的に初めてだったということもあり、昨年みた中で強く印象に残った展覧会のひとつ。
別記事は以下参照。
ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?
[会期]2021年9月18日〜2022年3月30日
[会場]ポーラ美術館
06 モネ-光のなかに
ポーラ美術館では印象派を代表する画家、クロード・モネの作品を多く収蔵していますが、建築家の中山英之さんによる会場構成のもと、それらが一堂に会した展覧会。収蔵するコレクションを単に並べるだけでなく、展示空間や展示方法を変えることで、作品に対する新たな見方を提示するという方法もあるんだなあ、と思わされた展覧会でした。先のロニ・ホーン展と同時開催で、こちらも同じく別の記事でも取り扱っています。
別記事は以下参照。
モネ-光のなかに
[会期]2021年4月17日〜2022年3月30日
[会場]ポーラ美術館
07 彫刻の森美術館
岡本太郎やオーギュスト・ロダンといった著名な美術家の彫刻作品が、公園のような散策路の中に散りばめられた彫刻の森美術館。企画展もたまに開催されているようですが、常設作品だけで一日では見切れないほどの膨大な作品数が展示されていました。建築家ユニットの手塚建築研究所が設計を手がけた体験型アート施設『ネットの森』、パブロ・ピカソの美術作品を大量に展示するピカソ館など、屋内施設も充実。
彫刻の森美術館常設展
[会期]-
[会場]彫刻の森美術館
08 Chim↑Pom展:ハッピースプリング
社会問題を題材とした過激ともいえる表現が強く印象に残る、アーティスト・コレクティブChim↑Pomの展覧会。2000年代中頃に始まる初期作から近年の作品までが回顧展というかたちで展示され、作品数にすると約150にもなったそう。作品自体もさることながら、それらが並べられた展示空間も題材に応じてつくりこまれていたのが印象に残りました。
Chim↑Pom展:ハッピースプリング
[会期]2022年2月18日〜2022年5月29日
[会場]森美術館
09 吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる
日本近代の建築家を代表するうちの一人、吉阪隆正の展覧会。彼の作品や活動をもとにした展覧会は公立美術館では初だそうです。吉阪隆正はル・コルビュジエのもとで所員として働いた建築家の一人ですが、同じくル・コルビュジエ事務所出身の前川國男や坂倉準三と比べ、独特な建築をつくる印象がありました。この展覧会ではそうした建築群だけでなく、ドローイングや言葉も展示されており、建築以外の分野の方々にも楽しめる内容に感じました。
吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる
[会期]2022年3月19日〜2022年6月19日
[会場]東京都現代美術館
10 Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展
東京都とトーキョーアーツアンドスペースが毎年実施している現代美術の賞の、受賞記念展。毎年2組の受賞者がおり、2022年には藤井光さん、山城知佳子さんの両名が受賞されました。展示構成も作品の背景にあるストーリーとつながっているように感じられ、一連のものとして訴えかけてくるのが印象に残りました。
TCAA2020-2022受賞記念展
[会期]2022年3月19日〜2022年6月19日
[会場]東京都現代美術館
11 はじまりから、いま。 1952-2022 アーティゾン美術館の軌跡—古代美術、印象派、そして現代へ
アーティゾン美術館の前身、ブリヂストン美術館の開館から現在に至るまで、開催してきた展覧会の膨大な資料や収蔵作品が展示された展覧会。展覧会名にもある通り開館は1952年で、昨年でちょうど70年だったそう。充実した美術作品のコレクションをみることができた他、企業メセナのさきがけとして開館時から行われてきた美術に関する土曜日講座の記録など、国内で美術に対する関心が醸成されてきた経緯を垣間見ることができた展覧会でした。
はじまりから、いま。
1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡—古代美術、印象派、そして現代へ
[会期]2022年1月29日〜2022年4月10日
[会場]アーティゾン美術館
(『2022年に訪ねた展覧会(上半期編・2/2)』につづく)