(『2022年に訪ねた展覧会(上半期編・1/2)から続く)
12 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
近代におけるウィーンや京都で活躍した上野リチ・リックスの個展で、世界でも初めての包括的な回顧展のよう。元々ウィーンに生まれた上野氏は、結婚を期に京都に移り住むようになったそう。ウィーン時代はウィーン工芸学校を卒業後、ウィーン分離派を代表する建築家であるヨーゼフ・ホフマンが創立したウィーン工房でデザイナーとして活躍しており、当時のウィーンを知る上でも貴重な作品群を見ることができる展覧会でした。
上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
[会期]2022年2月18日〜2022年5月15日
[会場]三菱一号館美術館
13 「手の中に抱く宇宙 イケムラレイコ+塩田千春」 刊行記念展覧会
ドイツのベルリンを拠点に活動する2人のアーティスト、イケムラレイコさんと塩田千春さんによる対話集の刊行を記念して開催された展覧会。両氏の協働により製作された立体作品、ドローイングが展示されました。元々塩田さんの作品は好きでよくみていたのですが、なるほどこういう協働の形もあるのかと思わされた展覧会でした。
「手の中に抱く宇宙 イケムラレイコ+塩田千春」 刊行記念展覧会
[会期]2022年4月2日〜2022年4月13日
[会場]銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM
14 調和にむかって ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより
建築を学んでいる人であれば知らない人はいないであろう、モダニズムの礎をつくった近代の建築家ル・コルビュジエの展覧会。建築家の展覧会とはいえ、ここでは彼の建築作品ではなく、設計と並行して描いた絵画が展示されました。ル・コルビュジエの画家としての評価はあまり高くはないようですが、周囲の芸術家達との影響関係や、画業が建築に与えた影響を考える上では貴重な機会だと感じました。
調和にむかって ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより
[会期]2022年4月9日〜2022年9月19日
[会場]国立西洋美術館
15 国立西洋美術館 新収蔵版画コレクション展
国立西洋美術館では新たに収蔵した作品をもとにした企画展を定期的に行っており、このときは2015年以降に収蔵された版画作品が展示されました。デューラーやレンブラントなど、他の美術館ではなかなか目にすることができない巨匠達の作品が展示された他、個人的に好きな画家であるピエール・ボナールのリトグラフは絵画とはまた違ったボナールの表現をみることができ、印象に残りました。
国立西洋美術館 新収蔵版画コレクション展
[会期]2022年4月9日〜2022年5月22日
[会場]国立西洋美術館
16 ダミアン・ハースト 桜
現代美術を代表するイギリスの作家、ダミアン・ハーストの個展。並んだのは展覧会名にもある桜を描いたシリーズで、20点以上の大型絵画が展示されていました。なお、桜シリーズ自体は107点ほどの作品があるんだそう。事前に写真等で展覧会の様子を目にしていた限りでは似たような絵画が並んでいるのかと思っていましたが、実際に訪ねてみると色彩や手法が異なることで全く違った印象の作品になっていることに驚かされました。
ダミアン・ハースト 桜
[会期]2022年3月2日〜2022年5月23日
[会場]国立新美術館
17 生誕110年 松本竣介
明治末に生まれ、昭和初期に画家として活動した松本俊介の展覧会で、神奈川県立近代美術館で多く収蔵する彼の作品を中心に展示されました。『立てる像』をはじめとする絵画や街を歩く際に持ち歩いた『スケッチ帖』の他、松本竣介が創刊した雑誌『雑記帳』の関連作家による挿絵原画もみることができた貴重な展覧会でした。神奈川県立近代美術館の鎌倉別館は2019年の改修と合わせてカフェスペースが増築され、以前よりもよりゆったり過ごせる空間になっていました。
生誕110年 松本竣介
[会期]2022年4月29日〜2022年5月29日
[会場]神奈川県立近代美術館鎌倉別館
18 ゲルハルト・リヒター展
現代アートの巨匠と言われるゲルハルト・リヒターの個展。油彩画や写真、デジタルプリントなどの平面作品からガラスを用いた立体作品まで、様々な媒体による作品が展示されました。美術家としての活動期間60年、年齢も90歳を迎えてなお現役というパワフルさもさることながら、多種多様な表現を用いながらも、一貫した興味関心が感じられるのが印象的な展覧会でした。
ゲルハルト・リヒター展
[会期]2022年6月7日〜2022年10月2日
[会場]東京国立近代美術館
19 草間彌生美術館 心の中の詩
2017年に開館した草間彌生美術館では、収蔵する作品をもとに定期的に展示替えがなされ、このときは企画展『心の中の詩』が開催されていました。草間彌生さんの名前を聞くとまず思い浮かぶシュルレアリスム的な絵画の他、展示室一室の空間を丸ごと作品としてつくりあげたインスタレーション作品も。大量に集められた草間さんの作品を改めて見ると、どの作品も空間を志向しているように感じられるのが印象的でした。なお、草間彌生美術館は窓口ではチケットを販売しておらず、美術館のWEBサイトのみで販売しているため要注意。
心の中の詩
[会期]2022年3月3日〜2022年8月28日
[会場]草間彌生美術館
20 末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち
自然との共生をテーマにした建築設計を得意とする建築家ユニット、SUEP.の展覧会。九州大学等と協働で進めているリサーチや、それらをもとに設計された建築プロジェクトが展示されました。建築の展覧会というと模型が並べられるのが常ですが、この展覧会では単に建築模型が置かれるだけではなく、それがドローイングやダイアグラム模型と組み合わされることで、リサーチとそこから生まれた思考が示されているのが印象に残りました。
末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち
[会期]2022年6月8日〜2022年9月11日
[会場]TOTOギャラリー・間
21 クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”
現代美術の芸術家夫婦、クリストとジャンヌ=クロードが手がけ、2021年に実現したプロジェクト『包まれた凱旋門』を中心とした展覧会。ジャンヌ=クロードは2009年、クリストは2020年にその実現を目にすることなく逝去されましたが、周囲の協力のもとプロジェクトは実現。当初の構想は1961年になされたそうで、60年にもわたる構想の意志の強さに驚かされました。クリストとジャンヌ=クロードによるドローイングやこれまでの活動を記録した映像の他、実際に凱旋門という歴史に残る建造物に布を被せるための、技術的な検討経緯に主眼を置いて展示されていたのが印象に残りました。
クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”
[会期]2022年6月13日〜2023年2月12日
[会場]21_21 DESIGN SIGHT
(『2022年に訪ねた展覧会(下半期編・1/2)』に続く)