数多くの美術館が立地する長野県の軽井沢に、2025年に開館した《黒柳徹子ミュージアム》。その名の通り、誰もが知るテレビタレントである黒柳徹子さんご自身による美術館で、彼女の収集した美術品やアンティーク、衣装などが展示されています。

《安曇野ちひろ美術館》や《陸前高田市立博物館》など、数多くの美術館・博物館を手掛けた内藤廣さんの設計ということで、開館前から話題になっていた建築。開館したばかりの2025年秋に足を運んできました。

黒柳徹子ミュージアムの外観。周囲を中木の生け垣に囲まれ、緑豊かな土地に建つ。館名サインに示されている美術館のロゴは黒柳さんの髪型をモチーフにしたものだろうか

黒柳徹子ミュージアムの外観。小さな屋根がパラパラと折り重なった姿が印象的。黒い金属板の外壁に木を組み合わせた外観は、内藤廣さんが近年設計した建築ではしばしば見かけるデザイン

駐車場側からの外観。メインアプローチ側からの外観と比べると落ち着きのある印象を受ける。この美術館を航空写真でみるときれいな多角形状になっており、アイレベルから見たときの印象と大きく異なるのがおもしろい

美術館には隣接してバス停が設けられており、ベンチも統一感のあるデザインがなされている。筆者が訪れたときも、多くの利用者がバスを活用して美術館を訪れていた

外部建具にはベイマツ材による木サッシが採用されている。日本家屋を思い浮かべると、木の建具は一見断熱性や気密性に劣りそうな印象を受けるが、近年はアルミサッシと同等がそれ以上の性能が確保できるほどに技術が向上している。出隅部分を方立とせず、ガラスで納めているあたりに設計者のこだわりが感じられる

エントランスから屋外をみる。展示室以外は大部分がガラスになっており開放感がある。ガラスはLow-Eを組み合わせた複層ガラスになっており断熱性能にも配慮されているよう

左:エントランスに設置されている黒柳徹子さんのポートレート・パネル/右:エントランスをくぐってすぐの位置に受付カウンターが設けられている。奥に見えるのはミュージアムショップ

展示室内観。展示室は基本的にエントランスから一続きの空間として計画されており、その中に黒柳さんの収集した美術品や衣装などが展示されている

建物の構造は在来工法による木造が採用されており、内部にも多くの柱が建てられている。展示ケースの内側にもあえて木の柱が建てられているが、こうした計画は文化財などを収蔵する一般的な美術館では忌避されがちであり、この美術館ならではの姿ともいえる

展示室から天井を見上げる。低層の美術館ながらも屋根の架構が現しとなった大空間として計画されており、空間が広々と感じられる

左:展示室内観。奥に見える赤い壁は上部に設けられ物見台(浅間山デッキ)へと続くエレベーター。周囲の柱は傾いて建てられており、上部の物見台が他とは異なる構造でつくられていることを予感させる。訪れたときは物見台は閉鎖中であったが、現在は時間と人数を限定して公開されているよう

木造ならではのディテール。鉄骨造やRC造の場合、ブレースなどの耐震要素に視界を遮られがちだが、低層かつ木造ということでガラスの手前に金属製のブレースがあってもさほど気にならない(右)。

左:美術館の断面詳細図・部分詳細図。内藤廣さんの設計した建築では、しばしば設計図が展示されている/右:物見台への手すりのディテールは《ちひろ美術館・東京》のそれと酷似している

内藤廣さんといえば安曇野と東京の《ちひろ美術館》を設計したことで知られていますが、黒柳徹子さんは元々当館の理事を務めていて、それをきっかけに知り合ったのだそう。*1《黒柳徹子ミュージアム》も安曇野と同じ長野県に位置し、どちらも木造の美術館ということで、内藤さんの作品の中でも《ちひろ美術館》の延長線上に位置付けられそうです。

*1:美術館のHPには内藤廣さんのメッセージが掲載されており、美術館が計画されるまでの経緯が語られている(https://kuroyanagitetsuko-museum.com/about/

小さな屋根がパラパラと折り重なる構成は、近年よく目にしますが、それらとの同時代性を感じられる建築。その中でも、在来木造に取り組んだ点が内藤さんの独自性と言えるかもしれません。

美術館の外観。ずっと眺めていると黒柳さんの髪型をモチーフに形態が検討されたのではないか、と思えてくる

内藤さんの建築といえば木と鉄骨を組み合わせた繊細なディテールが見どころのひとつですが、それが唯一採用されている物見台に立ち入ることができなかったので、機会を見つけてまた訪れたいと思います。

黒柳徹子ミュージアム
[竣工]2025年
[用途]美術館
[設計]内藤廣建築設計事務所
[所在地]長野県北佐久郡軽井沢町長倉574
[HP]https://kuroyanagitetsuko-museum.com