展覧会|美術

ぼんやりとした光の中でみる|『モネ-光の中に』展@ポーラ美術館

前記事に引き続き、ポーラ美術館。お目当ての展覧会のふたつ目は、『モネー光の中に』展です。

 

建築家の中山英之さんによる会場構成

展示室内の様子。曲面の壁により動線が構成されている

その名に掲げられている通り、この展覧会では印象派の代表的な画家であるクロード・モネの作品が展示されていました。今回初めて知りましたが、ポーラ美術館は国内で最も多くのモネの作品を収蔵している美術館だそうで、19点にもなるそう。ただ、今回訪ねたきっかけは別のところにあって、この展覧会の会場構成を建築家の中山英之さんが手掛けていることにありました。

中山さんはせんだいメディアテーク等の設計者である伊東豊雄さんの事務所出身の建築家で、2022年時点で東京芸術大学の准教授にも就かれています。これまでにも各地でモネの作品を見たことはありますが、ここでは中山さんの設計により独特な空間がつくられ、これまで体験したことがない環境下でモネの作品をみることができました。

 

曲面で覆われた洞窟のような展示空間

展示室内の様子。白い波板の壁に作品が展示されている

ほとんどエッジのない空間にやわらかな光がひろがる展示室。やや薄暗くもあるこの空間でモネの作品をみる体験は、どこかふわふわとした浮遊感のあるものでした。

平面的にも断面的にも曲面でつくられた丸みを帯びた空間に、それらをやわらかに照らす間接光。この展覧会は美術館の地下2階で開催されていましたが、大自然が背景にひろがる上階展示室と異なり、入り口をくぐると洞窟に迷い込んだかのような感覚に。

波板ガルバリウム鋼板と間接光

展示壁奥の壁〜天井が明るく照らされている。正面は作品名『国会議事堂、バラ色のシンフォニー』(1900年)
展示壁のディテール。展示壁上部に照明が仕込まれていて天井を照らしている

具体的には、展示壁を波板ガルバリウム鋼板を用いた曲面でつくることで、展示室を円弧を描くように一まわりする動線がつくられています。

これらの展示壁に加え、そのひと回り外につくられた白色の壁面も上部では天井と滑らかな曲面で連続。このようにしてできたエッジがほとんどない空間を間接照明で照らすことで、コントラストの小さいぼんやりとした空間が生まれています。

ポーラ美術館のロビーとの響き合い

展示壁のディテール。合板などの木材にガルバリウム鋼板が貼られ、塗装されている

展示壁に採用されているくすんだ緑(モスグリーン?)はそれのみで見ると独特な印象を受けますが、ポーラ美術館のロビーと隣り合うとまた違った印象が生じます。ガラスの屋根とプロフィリットガラスの大壁面による青々としたロビーと、展示室内の青みががかった緑がどことなく通じ合い、それぞれの空間の特徴を引き立てながらも一連の空間体験として違和のない一体感が生まれているように感じました。

展示室内の様子。展示されているのは『ルーアン大聖堂』(1892年)

先のロニ・ホーン展同様にこの展覧会も会期を終えてしまいましたが、別の会場構成で改めてモネの絵画を体験するためにも、また別の機会に訪ねてみようかと思います。

モネ-光のなかに
[会期]2021.04.17-2022.03.30
[会場]ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
[開館時間]9:00-17:00(入館は16:30まで)
[休館日]年中無休(展示替えのため臨時休館あり)
[会場構成]中山英之