ヴェネチアン・ガラス専門の美術館という、他にない専門性を有する箱根ガラスの森美術館。数多くの美術館が見られる箱根・仙石原のなかでも、木々に囲まれた自然豊かな土地に建っています。

その専門性に応じるように、一見西洋風で、テーマパークのような印象を受ける美術館。設計したのはこうした類の施設の専門家かと思いきや、実は《酒田市美術館》(1997年竣工)等を設計したことで知られる建築家、池原義郎さんが手掛けています。

池原さんの設計と聞くと素朴な建築を思い浮かべますが、この美術館はどちらかというと装飾の散りばめられた、賑やかな印象の建築。《酒田市美術館》とは竣工が1年違いということもあり、どのような美術館なのだろうと足を運んできました。

酒田市美術館。箱根ガラスの森美術家と同じく池原義郎さんの設計で1997年の竣工

箱根ガラスの森美術館のエントランス。美術館というよりもテーマパーク施設のような印象を受ける。この建物が入館受付及びゲートの役割を果たしており、くぐった先に美術館のエリアが広がっている

施設全体の案内図。最も大きなヴェネチアン・グラス美術館の他、現代ガラス美術館、ミュージアム・ショップ館、体験工房など、用途に応じた複数の棟が分散配置されている

エントランスをくぐった先からの眺め。左手の棟がヴェネチアン・グラス美術館、中央に見えるのはガラスのアートワーク《光の回廊「コッリドイヨ」》。

《光の回廊 コッリドイヨ》。小さなガラスの粒が集合してアーチ状に通路を覆っている

カフェ・レストラン棟外観。テラス席側を全面ガラス窓とした開放感のある設え。ガラス窓は全面開放することができ、屋内外を連続的に活用することも可能。カフェ・レストランのメニューは鉄板料理で知られるうかいグループが監修しているようで*1、訪れたときは満席になるほどの盛況

*1:箱根ガラスの森美術館公式HPより。1日6公演のミニ・コンサートも開催されているそう(URL:https://www.hakone-garasunomori.jp/cafe_restaurant/

ヴェネチアン・グラス美術館のエントランスロビー。室全体に色鮮やかな装飾が施されており、設備機器はなるべく目立たないように納められている。この棟には15~16世紀のヴェネチアン・グラスを中心とする作品が展示されているよう*2

*2:箱根ガラスの森美術館公式HPより。(URL:https://www.hakone-garasunomori.jp/museum/

ヴェネチアン・グラス美術館の展示室。二層吹抜の開放的な空間。ヴォールト天井はあくまでも内装材によるもので建物の構造としては機能していないと思われるが、空間をダイナミックにみせることに寄与している

先の展示室に展示されている作品はこの美術館を設計した建築家である池原義郎氏と、リヴィオ・セグーゾ氏による共作《ガラスの泉》。美術館を設計した建築家による美術作品が展示されている例は多くなくクライアントとの信頼関係が見てとれる

ヴェネチアン・ローズガーデン。一見花が咲いているように見えるが、実際は花木を模したガラス細工で飾られている

ミュージアムショップ館、体験工房の外観。低層かつ民家風の建物が並んでいる

現代ガラス美術館内観。20世紀にガラスの美術作品を手がけた作家、リヴィオ・セグーゾ氏(左)とデイル・チフーリ氏(右)の作品が展示されている

各館に囲まれた庭園には大きな池が設けられており、ガラスの美術作品もところどころに配置されている。夜にはライトアップもなされ演出にも一役買っている

ミュージアムショップ館内観。吹抜けまわりに階段が複雑に絡み合った立体的な空間。ミュージアムショップは小さな店舗が複数並んだバザールのような形態がとられている

冒頭に挙げた《酒井市美術館》と比べると、同時期に竣工した美術館でありながら、似ても似つかない意匠の建築。ただ、池原さんは《軽井沢・プリンスショッピングプラザ》(1995年竣工)や《西武遊園地》(1982年竣工)の設計も手掛けており、賑やかな施設の設計は全くの専門外というわけでもなさそうです。

館内には池原さんが共同制作に加わった作品も展示されており、建築家と美術館との信頼関係が感じられる建築。こうしたテーマパークのような施設を建築家が手掛けた例はそう多くは聞かないので、建築家の仕事としてこのような形もあるのだと強く印象に残る体験でした。

箱根ガラスの森美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
[用途]美術館
[設計]池原義郎
[開館]1996年
[HP]https://www.hakone-garasunomori.jp