展覧会|美術

2022年に訪ねた展覧会(下半期編・2/2)

(『2022年に訪ねた展覧会(下半期編・1/2)』から続く)

2022年に訪ねた展覧会(下半期編・1/2) (『2022年に訪ねた展覧会(上半期編・2/2)』から続く) https://tate-roku.com/exhibit...

32 ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展

ドイツ出身の美術商、ハインツ・ベルクグリューンが収集した美術品を中心に収蔵する、ベルクグリューン美術館の作品を中心とした展覧会。当該美術館の改修を期に、日本だけでなく各国で同様の催しが開催されているそう。展覧会名にもあるパブロ・ピカソの作品ばかりかと思いきや、パウル・クレーやアンリ・マティス、アルベルト・ジャコメッティらの作品も多数。世界的に著名な作家の作品が一同に会する充実した展覧会でした。

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展
[会期]2022年10月8日〜2023年1月22日
[会場]国立西洋美術館

 

33 浅野いにお展-the personality of the city-

『ソラニン』『おやすみプンプン』等の作品で知られる漫画家、浅野いにおさんの展覧会。これまで手がけた作品のデジタル作画原稿や手描きのネーム、過去の展覧会で展示された等身大プンプン像の他、作中にも登場する町田を始めとする街々の風景写真が展示されていました。美術館でもギャラリーでもなく、町田市民文学館という地域に根ざした施設での開催は、リアルな背景表現がよく話題にされる浅野さんの展覧会ならではのように感じました。

浅野いにお展-the personality of the city-
[会期]2022年10月22日〜2022年12月25日
[会場]町田市民文学館ことばらんど

 

34 大竹伸朗展

日本を代表する現代美術家の一人、大竹伸朗さんの個展。絵画や立体作品に加え、映像や本、大型の東屋など、規模も表現も多彩な作品群が展示されていました。とにかく多作な印象のある大竹さんですが、ここで展示されていた作品数も500以上と膨大。ただ、どの作品も一目で大竹さんの作品だとわかる一貫性のある思想が感じられたのが印象的でした。

大竹伸朗展
[会期]2022年11月1日〜2023年2月5日
[会場]東京国立近代美術館

 

35 東京国立近代美術館 所蔵作品展

企画展と並行して東京国立近代美術館で常時開催されている所蔵作品展は、充実した収蔵作品をもとに、定期的に新たなキュレーションのもと入れ替えられています。重要文化財も含む歴史に残る作家の作品はただ眺めているだけでも満足感がありますが、異なる並びで組み立てられた展示動線やストーリーのもとで作品をみると、訪れるたびに新たな気づきが得られるように思います。

東京国立近代美術館 収蔵作品展
[会期]-
[会場]東京国立近代美術館

 

36 川内倫子 M/E 球体の上 無限の連なり

1970年代生まれの写真家、川内倫子さんの展覧会。国内での大規模な個展は約6年ぶりだそうで、ここ10年の活動の中で生まれた作品が展示されていました。アイスランドで撮影された風景や自然、日常を写した写真の他、映像作品も展示され、作品が撮影されたときの空気感がじんわりと伝わってくる展覧会でした。なお、会場構成は建築家の中山英之さんが手がけており、展示室ごとに少しずつ違った空間のもとで作品をみることができたのが印象に残りました。

川内倫子 M/E 球体の上 無限の連なり
[会期]2022年10月8日〜2022年12月18日
[会場]東京オペラシティ アートギャラリー
[会場構成]中山英之建築設計事務所

 

37 東京オペラシティアートギャラリー収蔵品展

東京オペラシティアートギャラリーでは、先の『ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展』のような特殊な場合を除き、収蔵する作品をもとにギャラリーがキュレーションした展覧会が企画展と並行して常時開催されています。東京オペラシティアートギャラリーはギャラリーと名がつく施設では都内でも一、二を争う規模かと思われますが、収蔵品の多くを占める寺田コレクションは、東京オペラシティの共同事業者である寺田小太郎氏により収集が始められたものだそう。

東京オペラシティアートギャラリー コレクション展
[会期]2022年10月8日〜2022年12月18日
[会場]東京オペラシティ アートギャラリー

 

38 『MUJI for Public Space』展 街をもっと楽しむための100のアイデア

銀座の無印良品内、ATELIER MUJI GINZAを会場に開催された展覧会。良品計画の主催、建築家の元木大輔さん率いるDDAA LABの企画協力、会場構成のもと、展覧会名の通り都市の中における新たなパブリックスペースのアイデアが展示されていました。作品は模型が主で、設計事務所等では日頃見慣れた材料も多々見受けられましたが、会場の空気感や会場構成により普段とは少し違った見え方をするのが印象的な展覧会でした。

『MUJI for Public Space』展 街をもっと楽しむための100のアイデア
[会期]2022年12月2日〜2023年1月29日
[会場]無印良品銀座 ATELIER MUJI GINZA Gallery

 

39 加藤泉一寄生するプラモデル

画家であり彫刻家でもある現代美術家、加藤泉さんの個展。加藤さんは1990年代末に画家として活動を始めた後、彫刻作品を発表し出したのは2000年代からだそう。本展覧会では、木彫にヴィンテージのプラモデルを組み合わせた近年の作品を中心に展示されていました。彫刻とプラモデルと聞くと全く違うものに感じますが、加藤さんの作品は両者が一つの作品に自然な形で統合されているのが印象に残りました。

加藤泉一寄生するプラモデル
[会期]2022年11月6日〜2023年3月12日
[会場]ワタリウム美術館

40 展覧会 岡本太郎

近現代の日本を代表する芸術家の一人、岡本太郎の回顧展。主催に川崎市岡本太郎美術館や、岡本太郎記念館の運営母体である岡本太郎記念現代芸術振興財団が参画しており、主要作品も含めた多くの作品が展示されていました。いわゆる岡本太郎らしい絵画や彫刻の他、1930年代のパリで描かれた絵画も多く展示され、中にはニューヨークのグッゲンハイム美術館から出品されたものも。昔放映されていた岡本太郎が登場するCMなども展示され、彼が美術分野外の人にも広く親しまれたことが実感できる展覧会でした。

展覧会 岡本太郎
[会期]2022年10月18日〜2022年12月28日
[会場]東京都美術館

 

41 Yeka Haski 個展「Melty」

東京を拠点に活動するアーティスト、Yeka Haskiさんの個展。これまでもGoogleやIKEA等多くの企業とコラボレーションしてきたそうですが、ここではポップな色彩で描かれた平面作品が展示されていました。ホテルのラウンジのような空気感のある銀座蔦屋書店の一角で、それとは対照的な、ストリートを感じさせる表現が目をひきました。

Yeka Haski 個展「Melty」
[会期]2022年12月10日〜2022年12月26日
[会場]銀座 蔦屋書店アートウォール

 

42 中村萌 個展「before the dawn」

1980年代後半に生まれ、2010年代に美術家としての活動をはじめた中村萌さんの個展。丸太を素材に削り出し彩色された彫刻作品や、楠木から切り出した板を支持体に描かれた平面作品が展示されていました。丸太を素材にするのは相当な力仕事のはずですが、作品からはそれとは対照的な繊細な優しさを感じる展覧会でした。

中村萌 個展「before the dawn」
[会期]2022年12月17日〜2022年12月28日
[会場]銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM

 

43 原広司 建築に何が可能か-有孔体と浮遊の思想の55年-

『JR京都駅ビル』『梅田スカイビル』などの作品で知られ、80歳を越えた現在もなお現役の建築家、原広司さんの展覧会。近年、原さんとその事務所から、徐々に過去作の図面やスケッチが国立近現代建築資料館に寄贈されているそう。ここでは住宅を中心とする初期作から海外の設計競技への応募作まで、原さんの思想の変遷と共に紹介されていました。原さんは設計者としてだけでなく思想家としても後進に影響を与え続けている建築家ですが、実際の建物と思想とが両輪となって設計が進められることで数々の名作が生まれてきたことがよくわかる展覧会でした。

原広司 建築に何が可能か-有孔体と浮遊の思想の55年
[会期]2022年12月13日〜2023年3月5日
[会場]文化庁国立近現代建築資料館

以上、2022年に一都三県でみた展覧会を改めて振り返ると、例年と比べて建築家を取り上げた展覧会が多くあった印象。東京都美術館や東京国立近代美術館、東京都現代美術館といった大規模な美術館で開催されていることからも、今後も一般的なものとして定着していくのかもしれません。2023年も建築家の重松象平さんの会場構成によるクリスチャン・ディオール展やアントニオ・ガウディ展が予定されており、建築の観点からも美術の観点からも楽しみな一年になりそうです。