神奈川|建築

箱根ラリック美術館|土地の植生を活かしたガラス工芸作家の美術館

箱根町の中でもとりわけ宿泊施設が多く、自然豊かな仙石原。この地域には美術館も多く建っていて、箱根ラリック美術館もその内のひとつです。

その名の通りフランスの工芸家であるルネ・ラリックの作品を蒐集・展示する美術館で、彼が内装デザインを手がけたオリエント急行の列車も展示。気持ちの良いレストランが併設されていると聞き、昼食ついでに訪れてきました。

箱根ラリック美術館のエントランス(正面玄関)。レストラン棟とミュージアムショップ棟の間に設けられたゲートをくぐるようにして入る

美術館の案内サイン。展示室棟は森の中の道を通り抜けた先に置かれている

ショップ棟外観。建物内には広々としたミュージアムショップが設けられている。展示室棟へはショップ棟の庇の下を通って行き来する

展示室棟へと向かう経路。道中には赤いクラシックカーが展示されているが、この自動車に取り付けられたカーマスコットはルネ・ラリックデザインによるものだそう

右奥にみえるのが展示室棟。道中にはブリッジがかけられており、下を小川が流れている

左:展示室棟へと向かう道中のブリッジ/右:展示室棟の外観。ショップ棟と展示室棟の建物はシンプルな設え

展示室内観。展示室ではガラスケース内にルネ・ラリックの作品が展示されている他、照明などの細部の設えにも彼の作品がみられる(この展示室を除き展示室内は原則撮影禁止)

展示室棟の後半では睡蓮の池を目にすることができる。この睡蓮の池は既存の植物を残しつつ自然土を固めることでつくられたそう

レストラン棟外観。芝生で覆われた庭に向けて全面ガラスとなった開放的な設え。庭と反対側にはルネ・ラリックが室内装飾を手がけたオリエント急行が展示されており、内側でティータイムを過ごすこともできるよう。最終入室は15時まで

レストラン内観。芝生の庭に向けて開放的であると同時に、庇の出が大きくゆったりとした落着きもある空間

箱根ラリック美術館の遠景。自家用車での訪問が多いのか駐車場も充実。なお、箱根登山バスや小田急ハイウェイバス、観光施設めぐりバスなどでも訪問することが可能

箱根ラリック美術館の設計を手掛けたのは、日本を代表するゼネコンの一つである鹿島建設の設計部門(KAJIMA DESIGN)。BCS賞を始めとして数多くの賞を受賞しているようですが、その際には木々や清流といった自然に取り囲まれた敷地特性を活かした建物である点が高く評価されたようです。*1

*2:一般社団法人日本建設業連合会HP内、日建連表彰BCS賞の第47回受賞作品より。(https://www.nikkenren.com/kenchiku/bcs/result_year.html?year=2006

美術館の建物自体はシンプルながらも、敷地のすぐ側を流れる小川を引き込んだ配置計画や、元々敷地にあった転石を活用した擁壁、自然土を固めることでつくられたビオトープ等、周辺環境を活かすためにランドスケープに工夫の凝らされた施設。地域生態系の歴史調査が実施され、その内容が設計に反映されている等、建物の設計と同等かそれ以上に土地の生態系を活かすことに力点が置かれており、主張のある建物とはまた違った魅力のある、大人な建築だと感じました。

箱根ラリック美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186-1
[用途]美術館・博物館、レストラン
[設計]KAJIMA DESIGN
[施工]鹿島建設
[竣工]2004年
[HP(美術館)]https://www.lalique-museum.com/
[HP(レストラン)]https://emoa.by-onko-chishin.com/