都心から片道2時間ほどで行き来でき、日帰り旅行の定番とも言える神奈川・箱根町。関東有数の温泉地として知られる一方、美術館も数多く立地しています。

観光地としての開発が本格的に始まった1960年代以降、各時代で新しい美術館がつくられてきた地域。これまで訪れた美術館より、特に印象に残ったものをピックアップしました。

ポーラ美術館|[設計]日建設計

ポーラ美術館外観。メインアプローチからはガラスの屋根だけが見え、大部分は目下に埋まるように建っている

箱根の木々に埋もれるようにして建ち、ガラス・トップライトからの自然光が燦々と館内に降りそそぐポーラ美術館。全国に建つ美術館のなかでも、個人的に好きなもののひとつです。

ポーラ美術館のエントランス。4層吹抜のダイナミックな空間にモールドガラスの大壁面や繊細なプロポーションの十字鉄骨柱が映える

4層吹抜の大空間を中心に据えた空間が居心地がいいのはもちろん、免震構造が可能にしたものすごいプロポーションの十字柱、空調ルートも兼ねるモールドガラスの大壁面など、技術的にも見どころの多い建築。福田美術館などの設計を手掛けている安田幸一さんが、日建設計に所属されていた頃に手掛けた作品ということも興味の惹かれる点のひとつです。

ポーラ美術館の展示室。ところどころで屋外が覗く。写真は2021年から2022年にかけて開催されていた展覧会《ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?》。

これまで夏と冬に訪れましたが、四季折々で表情が変わり、訪れる度に発見のありそうな空間体験でした。

ポーラ美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町仙石原字小塚山1285-453他
[用途]美術館
[設計]日建設計
[施工]竹中工務店
[竣工]1999年
[HP]https://www.polamuseum.or.jp/

*詳細は以下でも書きました▼

ポーラ美術館|箱根の森に佇む光豊かな美術館 自然豊かな箱根山の中腹、木々に囲まれて建っているポーラ美術館。温泉地である箱根湯本から、車で20分ほどの土地に位置しています。京都の嵐...

彫刻の森美術館|[設計]井上武吉他

彫刻の森美術館の本館。設計は井上武吉。約70,000㎡の広大な敷地に複数の展示室棟が建てられている

およそ70,000㎡という、他の美術館と比べても圧倒的な敷地面積を誇る彫刻の森美術館。歴史も長く、開館から既に50年以上もの間親しまれてきています。屋外に彫刻を展示するという、単純なようで課題も多い構想。高低差のある箱根の土地形状を活用しながら、空間的にうまく解かれているのが印象的でした。

広大な土地のあちこちに屋外彫刻が置かれている。敷地の高低差をうまく利用することで屋外ながらも美術館外からは彫刻作品を目にすることができない配置計画がとられている

これまで何度も改修が重ねられ、ピカソ館を始めとして歴史に残る美術家の作品も多数展示。手塚建築研究所やトラフ建築設計事務所といった建築家が手がけた施設もあり、建築と美術の両側面で見どころの多い美術館でした。

彫刻の森美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
[用途]美術館
[設計]井上武吉・吉嶋建築事務所(当初)
[施工]鹿島建設
[竣工]1969年(当初)
[HP]https://www.hakone-oam.or.jp

*詳細は以下でも書きました▼

彫刻の森美術館|箱根の森に広がる7万㎡の屋外美術館 およそ70,000㎡という広大な屋外展示場に、数多くの彫刻作品が立ち並ぶ箱根・彫刻の森美術館。木々や芝生に囲まれた緑の風景に小さな建物...

箱根ガラスの森美術館|[設計]池原義郎

箱根ガラスの森美術館の外観。民家風の建物が立ち並ぶ中にガラス作品も点在している

どこか異国を訪れたかのような、民家風の建物が建ち並ぶ箱根ガラスの森美術館。ヴェネツィアン・グラス専門の美術館という特徴が意識されてか、庭園に設けられた池を中心とした、親水の場が計画されていたのが印象的でした。

ヴェネツィアン・グラス美術館の内観。美術館のエリア内には複数の棟が建っている。右の写真はこの美術館の設計を手がけた池原義郎氏とリヴィオ・セグーゾ氏の共作

一見テーマパークのようで、この種の施設の専門業者によるものかと思いきや、実際に設計を手がけたのは早稲田大学で教鞭もとられていた建築家、池原義郎さん。館内には池原さんとリヴィオ・セグーゾ氏の共作によるガラス作品も展示されており、建築家の仕事としてこのような形もあるのだと考えさせられた美術館でした。

箱根ガラスの森美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
[用途]美術館
[設計]池原義郎
[開館]1996年
[HP]https://www.hakone-garasunomori.jp

*詳細は以下でも書きました▼

箱根ガラスの森美術館|建築家の設計によるテーマパークのような美術館 ヴェネチアン・ガラス専門の美術館という、他にない専門性を有する箱根ガラスの森美術館。数多くの美術館が見られる箱根・仙石原のなかでも、木...

箱根ラリック美術館|[設計]KAJIMA DESIGN

箱根ラリック美術館のレストラン棟。レストランやショップだけの単独利用も可能なよう

日本を代表するゼネコンのひとつである鹿島建設による設計で、建築業界で代表的な賞のひとつであるBCS賞も受賞している箱根ラリック美術館。展示作家であるルネ・ラリックはアール・ヌーヴォーからアール・デコの時代に活躍したフランスのガラス作家ですが、日本美術からも大きな影響を受けていたようです。

箱根ラリック美術館の展示室。フランスのガラス作家であるルネ・ラリック氏の作品を展示

美術館の建物自体はシンプルながらも、ランドスケープに様々な工夫が凝らされた施設。土地の生態系を調査した結果が仮設計画(工事計画)を含めた様々な側面に反映されており、設計と施工を一貫で手がける鹿島建設の技術力が存分に活かされているように感じました。

箱根ラリック美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186-1
[用途]美術館・博物館、レストラン
[設計]KAJIMA DESIGN
[施工]鹿島建設
[竣工]2004年
[HP(美術館)]https://www.lalique-museum.com/(美術館)
[HP(レストラン)]https://emoa.by-onko-chishin.com/(レストラン)

*詳細は以下でも書きました▼

箱根ラリック美術館|土地の植生を活かしたガラス工芸作家の美術館 箱根町の中でもとりわけ宿泊施設が多く、自然豊かな仙石原。この地域には美術館も多く建っていて、箱根ラリック美術館もその内のひとつです。 ...

岡田美術館|[設計]三浦慎建築設計室

岡田美術館外観。坂道を登る途中にそびえ立つようにして建つ

宿泊施設が密集して建つ箱根・小涌谷地域で、坂道を登る途中にそびえ立っている岡田美術館。一見低層のようでありながら、傾斜地に建っていることを利用して5層にわたって展示室が設けられています。

岡田美術館の前庭。周辺には温泉を有する宿泊施設が多くあるが、この美術館にも左に見えるように足湯が併設されている

日本から東洋にかけての地域で生まれた美術作品が収蔵されている他、足湯や庭園といったくつろげる施設も併設されている美術館。庭園内には散策コースやレストランもあるようなので、1日ここで過ごすこともできそうです。

岡田美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
[用途]美術館・博物館、レストラン
[設計]三浦慎建築設計室
[竣工]2013年
[HP]https://www.okada-museum.com/

[参考]行ってみたい箱根の美術館

これまで箱根には何度か訪れているものの、他にも魅力的なスポットが点在していることもあって、まだまだ足を運べていない美術館が多数有り。その中でも、美術館の建築そのものに興味を惹かれるもの、今後訪れたい美術館をピックアップしました。

箱根美術館|[設計]岡田茂吉他

1952年という、箱根にある他の美術館と比べても圧倒的に早く開館した箱根美術館。令和3年にはこの美術館が建つ一帯「神仙郷」が国の名勝に指定されるなど、公にも歴史的に重要なものとして認められているようです。

本館の設計は建築家ではなく、芸術家・実業家である岡田茂吉氏が手掛けていて、別館として彼の生涯を展示した施設もあり。同じく岡田氏が関わった熱海のMOA美術館とは、姉妹館という関係にあるそうです。

敷地内には建築家の吉田五十八氏が手掛けた日光殿といわれる建屋もあるようで、箱根が発展する起点にあった施設としていつか訪れてみたい美術館のひとつです。

箱根美術館
[所在地]神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300
[用途]美術館
[設計]岡田茂吉、吉田五十八他
[竣工]1952年(本館)
[HP]https://moaart.or.jp/hakone/

これまで訪れた箱根の建築から行ってよかった美術館を5点、近々訪れたい美術館1点をピックアップしてみました。

宿泊施設を中心として、美術館以外にも興味の惹かれる建築が多数位置している箱根。今後も定期的に足を運ぶことになりそうです。