静岡|建築

行ってよかった静岡の建築|2024年版

東京駅から新幹線を使えば1〜2時間と、比較的行き来しやすい距離にある静岡県。県内には坂さんやSANAAなど、世界で活躍する建築家による作品が増えてきました。

東西の主要都市が離れていることもあって1日で訪ねるのは難しいものの、他県のついでにも訪れやすい県。これまで訪ねた建築のなかから、行ってよかった建築をピックアップしてみました。

静岡県富士山世界遺産センター|[設計]坂茂建築設計他

静岡県富士山世界遺産センター

世界各地で作品をつくり続けている、坂茂さんの設計した静岡県富士山世界遺産センター。坂さんおなじみの木の格子で覆われた「逆さ富士」、これが水盤に映る姿が強く記憶に残りました。

静岡県富士山世界遺産センターの展望ロビー

浅間大社のすぐ近くということもあってか、宗教建築のような神々しさも感じるシンボリックな建築。ロードサイドに建つランドマークとしても機能していたことには納得感がありました。

*詳細は以下でも書きました▼

静岡県富士山世界遺産センター
[竣工]2017年
[設計]坂茂建築設計(建築)、Arup(構造・設備)、オンサイト計画設計事務所(ランドスケープ)
[用途]博物館
[住所]静岡県富士宮市宮町5-12
[HP]https://mtfuji-whc.jp/

静岡市歴史博物館|[設計]SANAA他

静岡市歴史博物館

SANAAの設計で2022年に竣工した静岡市歴史博物館。国内で手掛ける大規模展示施設としては金沢21世紀美術館以来ということもあってか、プロポーザルのときから話題になっていたように記憶しています。

静岡市歴史博物館の内観。戦国時代末期の遺構をみることができる

エキスパンドメタルの外装や木ルーバーの天井など、他のSANAA建築で用いられた手法が散りばめられた建築。上部が直方体というシンプルなかたちでつくられている一方、エキスパンドメタルで覆われていることで、堅くなりすぎずに柔らかな空気感の建築に感じられたのが印象的でした。

*詳細は以下でも書きました▼

静岡市歴史博物館
[竣工]2022年
[設計]SANAA(妹島和世+西沢立衛)(建築)
[用途]博物館
[住所]静岡県静岡市葵区追手町4-16
[HP]https://scmh.jp

グランシップ|[設計]磯崎新アトリエ他

グランシップ(静岡県コンベンションアーツセンター)

東静岡駅前に堂々と建つ、グランシップ。磯崎新さんの設計で1998年に竣工した施設で、ホールやギャラリーといった様々な機能が入った複合施設です。

グランシップ内観

駅前広場に面して建つ巨大な戦艦のような外観で、シンボリックな迫力のある建築。磯崎さんの建築はそれが設計された時代によって変化する印象がありますが、1998年というと「秋吉台国際芸術村」や「なら100年会館」など他にも大規模建築を手がけていた時代でもあり、それらと見比べてみるのもおもしろそうです。

静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ
[竣工]1998年
[設計]磯崎新アトリエ(建築)
[用途]劇場、集会場、展示場
[住所]静岡県静岡市池田79-4
[HP]https://www.granship.or.jp/

駿府教会|[設計]西沢大良建築設計事務所他

駿府教会

西沢大良さんの設計で2008年に竣工した駿府教会。レッドシダーの外装がエイジングにより黒くなり、雑誌の誌面でみたときよりも緊張感が増して見えたのが印象的でした。

駿府教会内観、天井

外装とは異なる木材で仕上げられた内部は、トップライトから柔らかな自然光が差し込む居心地の良い空間。同じ木材といっても色彩や風合いが大きく異なっていて、シンプルな外観と豊かな内部空間のギャップは、実際に体験しないとわからない驚きがありました。

西沢大良さんの設計した建築で内部空間が体験できるものは多くないので、その意味でも貴重な体験。牧師さんにとても親切にして頂き、内観までゆっくりと見学させてもらえたことが良い思い出として残りました。

駿府教会
[竣工]2008年
[設計]西沢大良建築設計事務所(建築)
[用途]教会
[住所]静岡県静岡市葵区相生町15-1
[HP]https://www.sunpukyokai.org/

静岡県立美術館|[設計]設計共同企業体 静岡設計連合他

静岡県立美術館ロダン館

30を超える数のロダン作品を展示している、静岡県立美術館。静岡で活動する設計事務所の協働により設計された本館と、日総建によるロダン館の空間的な対比が印象的でした。

静岡県立美術館本館

洞窟の中のような落ち着きある本館と、ほぼ全体がトップライトで覆われた明るいロダン館。近年の美術館でみられる気軽な訪れやすさはないものの、ここでしか味わえない美術館らしい静謐さのある建築でした。

*詳細は以下でも書きました▼

静岡県立美術館
[竣工]1986年(本館)1993年(ロダン館)
[設計]設計共同企業体 静岡設計連合(本館)、日総建(ロダン館)
[用途]美術館
[住所]静岡県静岡市駿河区谷田53-2
[HP]https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/

[参考]行ってみたい静岡の建築

これまで2、3度訪ねた静岡県ですが、まだまだ行ってみたい建築が多数。最近になって再開した建築や日曜日閉館の建築などの制限があるものの、近々訪ねるためにリサーチした建築をピックアップしました。

資生堂アートハウス|[設計]計画・設計工房 谷口吉生 高宮真介他

資生堂アートハウス(「Yoshio Taniguchi: Nine Museums」(Yoshio Taniguchi他著,Museum of Modern Art発行,2004)より)

谷口吉生さんの設計で1978年に竣工した資生堂アートハウス。国内外に数多くの美術館や博物館を残している谷口さんですが、この資生堂アートハウスが初めて設計を手掛けた美術館にあたります。

資生堂アートハウス内観(資生堂アートハウス(「Yoshio Taniguchi: Nine Museums」(Yoshio Taniguchi他著,Museum of Modern Art発行,2004)より)

クライアントからの当初の要望は美術品を保管する倉庫だったようですが、そこに対して展示施設も合わせて提案、実現したものなのだそう。日曜日が休館なので見学できる日程が限られますが、法隆寺宝物館を始めとして歴史に残る建築を多く手掛けている谷口さんの初期作と聞いたら、気にならずにはいられません。

資生堂アートハウス
[竣工]1978年
[設計]計画・設計工房 谷口吉生 高宮真介(建築)
[用途]美術館
[住所]静岡県掛川市下俣751-1
[HP]https://corp.shiseido.com/art-house/jp/

ねむの木こども美術館どんぐり|[設計]藤森照信+内田祥士(習作舎)他

掛川市の山奥に建つ、ねむの木こども美術館どんぐり。一見して藤森照信さんの設計だとわかるこの美術館、すぐ近くには坂茂さんの設計による別館も建てられています。

学校法人ねむの木学園の運営する施設ということで、そこに通う子どもたちの作品が展示されているよう。自然に囲まれた山奥の風景と藤森さんの牧歌的な建築、そこに子どもたちの作品が並んだ光景はひとつの世界観がつくりあげられていそうです。

ねむの木こども美術館どんぐり
[竣工]2006年
[設計]藤森照信+内田祥士(習作舎)(建築)
[用途]美術館
[住所]静岡県掛川市上垂木3534-3
[HP]https://www.nemunoki.or.jp/nemunokiartmuseum-donguri

バー・コンブレ|[デザイン]倉俣史朗

バー・コンブレ(『倉俣史朗の世界』(田中一光監修,植田実他編集,財団法人アルカンシェール美術財団発行,2008)より)

倉俣史朗さんがインテリアデザインを手がけたバーが2023年に営業を再開*1。倉俣さんに影響を受けたと公言している建築家も多く、もはや伝説的な存在になっていますが、彼が内装デザインを手がけた空間はそのほとんどが失われてしまったため、このバー・コンブレはとても貴重な空間のように感じます。

倉俣史朗さんが手がけた「ミス・ブランチ」(1988)。2023年に東京国立近代美術館で開催された展覧会「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」より

ガラスの脚で支えられたカウンターやテラゾーの床、アルミアルマイトなど、倉俣作品でみられる要素がたくさん詰まったインテリア。バーという用途の特性上、遅くまで営業しているようなので、他の建築を巡った後に訪ねる予定も組めそうです。

*1:ELLEのWEBサイトで再開後の様子が詳しく取り上げられている。(URL:https://www.elle.com/jp/decor/decor-interior-design/g45449603/comble-shirokuramata-23-11/

バー・コンブレ(バー Comble)
[竣工]1988年
[デザイン]倉俣史朗
[用途]レストラン
[住所]静岡県静岡市葵区呉服町2-7-26
[SNS]https://www.instagram.com/comble.bar/

これまで訪ねた建築のなかから行ってよかった建築を5点、その他これから訪ねたい建築として3点ピックアップしてみました。今回取り上げなかった建築の中にも、掛川市庁舎や月見の里遊学館など気になる建築は多く、今後も定期的に訪ねたいと思います。