美術館やギャラリーの集まる東京六本木、乃木坂駅のすぐ近くに建つTOTOギャラリー・間(通称ギャラ間)。その名の通りトイレメーカーとして知られるTOTOの運営による施設で、建築を専門に取り扱っているギャラリーです。
新しい展覧会が始まる度に訪ねているこのギャラリー、今回も先日より始まった展覧会をみに訪ねてきました。
建築家やデザイナーにより発足された都心型ギャラリー

TOTOギャラリー・間(以下、ギャラリー・間)は1985年に開設されたギャラリーで、発足時は建築家の安藤忠雄さんやグラフィックデザイナーの田中一光さんら錚々たる面々が発足、運営に関わられていたそう*1。現在は安藤さんは特別顧問になられたようですが、その代わりに貝島桃代さんや平田晃久さんといった著名な建築家の方々が企画、運営に携わられています。
*1:TOTOギャラリー・間のHPより。(URL:https://jp.toto.com/gallerma/about/index.htm)
企画としては建築家の個展として開かれることが多く、2024年は能作文徳さん+常山未央さんや魚谷繁礼さん、大西麻貴さん+百田有希さんの展覧会が開催。大御所建築家というよりはやや若手〜中堅の建築家が取り上げられることが多く、一種の登竜門として機能している印象があります。

1棟丸ごとTOTOが管理運営を行なっているようで、地下1階と1階はTOTOのショールーム、2階は書店、そして3、4階がギャラリーという階構成。建築に関連する機能がコンパクトに詰まった直方体からなる外観は、六本木のど真ん中に建つ企業運営のギャラリーならではと言えるかもしれません。

自然光を取り入れた建築専門ならではの展示空間

建物に入ってすぐの位置に設けられたEVから3階にあがると、そのすぐ脇からギャラリー空間が展開。ギャラリー・間で開催される展覧会ではよくそれに合わせて作品集が出版されますが、EV脇にその作品集が飾られているのも印象的です。


ギャラリー内の天井は黒く塗られた格子に覆われていて、その奥の躯体や設備が透けて見える設え。三方を展示壁に囲まれた一般的なギャラリー然とした空間のなかで、西側の中庭に向けて開いた大きな窓がアクセントになっています。

紫外線劣化の原因になりかねない自然光は、絵画などを展示する一般的なギャラリーでは嫌われがち。屋外に対して大きく開いた展示空間は、模型や写真、映像などの展示が主であり、かつ定期的に展示が入れ替わる建築専門のギャラリーだからこそ活きる空間構成であるように思いました。
屋内外の行き来から生まれる多様な展示体験


ギャラリー・間での空間体験を特徴づけているひとつは、屋外を経由して上下階を行き来する展示動線。EVを使えばバリアフリーでの行き来はできるものの、基本的には中庭に設けられた屋外階段を通じて3階と4階を行き来する動線計画がとられています。

多くの展示ではこの中庭も展示場所のひとつとして活用されていて、パビリオンなどの大規模な作品が展示されることも。屋外階段から連続するブリッジからは屋外の展示を上から見下ろすことができ、展示作品を立体的に眺めることも可能です。

展示動線の中で一度屋外に出ることで、何となく気分の切り替えに。上階にあたる4階の展示室も設え自体は3階と類似していますが、この気分の切り替えを見越してか、展覧会によっては3階と4階とで雰囲気を変えた展示方法がとられています。

都心らしいコンパクトなギャラリーながらも、この展示動線によって様々な展示体験を味わえることがこのギャラリーの魅力のひとつになっているように感じます。
ー

ギャラリー・間の2階にある書店では建築関連の書籍を多数取り扱っていて、その品揃えは都内でも有数。展覧会ついでに多くの書籍に触れられることに加え、入場無料であることも手伝ってか、建築学生で賑わっている様子をしばしば目にします。
同じく建築専門のギャラリーとして運営されてきたLIXILギャラリーが2020年に閉館したときは寂しく思いましたが、このギャラリー・間が建築に関わる人の学びの場として今なお続いていることに、改めてありがたさを感じます。
TOTOギャラリー・間
[開館]1985年
[設計]不明
※公式情報ではないものの、インテリアと屋上は杉本貴志さんの設計であるという情報がありました。
[用途]ギャラリー
[住所]東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル
[HP]https://jp.toto.com/gallerma/index.htm