家具と木材を設計する#01―不朽の樹種、オーク・ビーチ・チーク

オークやビーチ、タモといった外産材から、スギやヒノキといった国産材まで、家具や建築に使われる木材の種類は多種多様。100年前と現在ではよく使われている樹種も違っていて、時代によるうつりかわりがあるのも木材のおもしろさのひとつです。
建築設計の仕事をしていると、家具選びのときはもちろん、造作工事でベンチや棚をつくるときにもどの木材を使用するか悩みます。これまでの経験や訪れた建築を基にしながら、樹種ごとの特性を比較、書き留めておきます。
*文章量の都合から複数の記事に分けることにしました。他の樹種についても今後継続して投稿していきます。
オーク(ナラ)|木目のはっきりとした不朽の木材

オーク(ナラ)の基本特性
[分類]ブナ科コナラ属/広葉樹
[産地]国内外に幅広く分布するが、北米産のホワイトオークが最も多用され、レッドオークも使われる。日本のナラやカシもオークの一種。
[耐久性]密度が高いために耐水性が高く、硬い。
[意匠性]木目がはっきりとしている。
[主な用途]家具や建材、ウィスキーの樽等。
[備考]密度が高いために重い(比重:0.6〜0.75)。

ジャン・プルーヴェがデザインした《スタンダード》やハンス・J・ウェグナーがデザインした《ヴァレットチェア JH540》など、20世紀中頃にデザインされた家具に多用されているオーク材。日本国内ではナラ材とも呼ばれますが、木材を構成する組織の密度が高いために硬く丈夫で、長い年月を生き残ってきたヴィンテージ家具でもしばしば見かけます。

密度の高さからくる重量の大きさから重厚感があり、虎斑(とらふ)と呼ばれる木目もはっきり出ることから上質感を出すことのできる木材。無垢材のままだと高額かつ重く扱いにくいため、練付突板合板*1に加工した上で、家具や建材に使われている姿をよく目にします。
*1:本物の天然木を薄くスライスし、ラワン合板などの基材に貼り付けたもの。現在では内装材や家具で多用されている。

例えば、内井昭蔵さんの設計した《世田谷美術館》では、美術館のためにデザインされたベンチやエントランスホールの壁にナラ材を使用。谷口吉生さんの建築でも、《土門拳記念館》を始めとしてよく使われています。
木目の強さから家具単独だと浮いて見えてしまいがちなので、他の建材と組み合わせて使用するのがしっくりくるように思います。

ビーチ(ブナ)|曲げ加工に適した緻密で均質な木材

ビーチ(ブナ)の基本特性
[分類]ブナ科ブナ属/広葉樹
[産地]ヨーロッパや北米など世界中に分布。日本ではブナと呼ばれる。
[耐久性]硬く靭性があり、割れにくい。但し、耐朽性は高くない。
[意匠性]木目が細かく明るい
[主な用途]家具、ウィスキーの樽等
[備考]生木の状態で大量の水分を含むため、十分に乾燥させないと腐りやすく反りがでやすい。

ハンス・J・ウェグナーのデザインした北欧家具の代表的存在、《CH24》(ウィッシュボーンチェア、Yチェア)に使われていることで有名なビーチ材。近年だと、世界的に有名な建築家ユニット、SANAAのデザインしたマルニ木工の椅子《SANAAチェア》などにも使われています。

ドイツやフランスといった北欧以外のヨーロッパでも広く採れ、北米、日本にも自生する樹種のため、広い地域で使い続けられているビーチ材。適度な堅さと柔軟性を有し、水に濡らすとより曲げやすくなることから、曲げ加工が用いられる家具に特に多用されています。

密度が大きいことに加えて水分を吸いやすく、やや暴れやすい特性から建材として使用されている姿はあまり見かけないものの、組織が均一なために塗装ムラが出にくい木材。木目についても先のオーク材ほど強くないので、他の材料が使われている空間にも比較的合わせやすいように思います。

ちなみに《CH24》はウェグナー氏が量産化を狙ってデザインしたことで知られていますが*2、主材のビーチ材は彼の拠点であったデンマークでも豊富に採れる木材。この椅子の特徴である曲げ木が、使用する木材の靱性と加工性を最大限に活かした造形だと気がついたとき、まさに生まれるべくして生まれたプロダクトなのだと深く納得しました。
*2:『ハンス・ウェグナー 至高のクラフツマンシップ』(織田憲嗣著,Bunkamura ザ・ミュージアム編,株式会社青幻社発行,2026)より。
チーク|天然の油分を纏った気品ある木材

チークの特性
[分類]シソ科チーク属/広葉樹
[産地]東南アジアを中心とする熱帯に分布。現代における天然チークはミャンマー産のものが大半で、使用されている多くは植林材。
[耐久性]油分が多く密度が高いために耐水性が高い。摩擦やカビにも強く、経年劣化しにくい。堅く割れにくく、反りも少ない。
[意匠性]木目がきれいに出る。色味は製材した直後は明るいが、年月を経ると油分が出てきて深みのある色になる。
[主な用途]高級家具、建材等。古くは船舶にも多用されていた。
[備考]密度が高いためにやや重い。世界三大銘木のひとつ。

世界三大銘木のひとつで、高級木材ともいわれるチーク材。フィン・ユールのデザインした《エジプシャンチェア》や、その他ヴィンテージ家具に使われている例はよく見かけますが、現代の家具で見かけることはそう多くはない印象があります。

過去に遡ってみると、1950年代から1960年代にかけての北欧では、東南アジア諸国から輸入したチーク材が家具製作に多用されていたよう。ただ、そのときにそれら地域の自生林が大きく減少したために、現在では伐採が厳しく制限されています。
現在では、天然チークの入手はミャンマー以外からは実質不可能に。他国から入手する植林材も含めて価格が高騰していることもあり、家具や造作材としてなかなか使いにくい木材になっています。

木材としての耐久性は高く、硬さはオーク材と同程度でありながら、粘り気が強くビーチ材以上に折れにくい木材。また、木材自体に油分が豊富に含まれているために、水や虫に強い点もチーク材の耐久性を高めています。

豊富な油分によって色に深みがあり、時間が経つほどさらにそれが増してくるのもチーク材の特徴。ヴィンテージ家具というと飴色の家具が思い浮かぶ人も多いかと思いますが、その印象はチーク材のこの特徴に由来しているものと思われます。
木目も強く、存在感のある素材感なので、周囲に馴染ませるというよりは、空間の主役として使った方がチーク材のよさが際立つように思います。

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複製技術の向上により、外観だけでは木材と見分けがつかない樹脂製品も多くなりましたが、条件が合えばやはり本物の木材を使いたいもの。希少木材となったチーク材はともかく、オーク材やビーチ材はネットショップで手に入れることも可能なので、仕事はもちろん、自宅でも近々使ってみたいと思っています。
*補足*インターネットで木材を購入する際によく使用しているネットショップを紹介しておきます。ナラ材やブナ材に限らず、様々な木材を取り扱っているので便利。アフィリエイトを使用しているので気になる方は別途ご利用ください。
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・『フィン・ユールとデンマークの椅子』織田憲嗣他著、小林明子他編、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館発行、2022
・『ハンス・ウェグナー 至高のクラフツマンシップ』織田憲嗣著、Bunkamura ザ・ミュージアム編、株式会社青幻社発行、2026
・『家具でつくる本の空間』藤江和子アトリエ著、株式会社彰国社発行、2016


