香川の建築(四国本土編)|行ってよかった建築 2026年版

丹下健三さんや谷口吉生さん、SANAAなど、日本の近現代を代表する建築家の代表作が建っている香川県。直島や豊島といった瀬戸内海の島々にも見るべき作品は数多くありますが、四国本土だけでも、1度の旅行では回りきれないほどの建築が見られます。
自分はこれまで、三度ほど香川に足を運びましたが、そのときに訪れた建築のなかから、行ってよかった建築をピックアップしてみました。
香川県庁舎|[設計]丹下健三研究室(創建時)

丹下健三さんと言えば、《代々木国立競技場》や《広島平和記念資料館》を設計したことで知られますが、香川県高松市に建つ《香川県庁舎》(現在は東館)も、これらと並ぶ彼の代表作のひとつ。元々は1958年に竣工した建物ですが、2019年には免震レトロフィットによる耐震改修が行われ、2021年には国の重要文化財に指定する答申も出されました。

耐震改修の際には建物南の外構も整備されましたが、その際には建設当時の意図を尊重した復旧が行われたのだそう*1。庁舎1階のロビーやピロティ、南庭が一体的につながる様子には、当時の設計意図が息づいているようで感慨深いものがありました。
*1:『新建築 2020年3月号』(株式会社新建築社発行,2020)より。

1階展示スペースには免震レトロフィットの工事記録や建物外観を特徴づけている手摺の製作方法なども紹介されており、空間体験だけでなく、技術的な側面でも学びの多い体験でした。
香川県庁舎(現在は東館)
[所在地]香川県高松市番町4-1-10
[用途]事務所(県庁舎)
[設計]香川県庁舎東館耐震改修工事(創建時)、松田平田設計(改修基本設計・監理)、大林組一級建築士事務所(実施設計)
[施工]大林・菅特定建設工事共同企業体
[竣工・完成]1958年(創建時)、2019年(改修工事)
[HP]https://www.pref.kagawa.lg.jp/
[参考書籍等]
・『新建築2020年3月号』新建築社、2020
東山魁夷せとうち美術館|[設計]谷口建築設計研究所

東山魁夷氏の作品を収蔵する美術館といえば《長野県立美術館 東山魁夷館》がまず初めに思い浮かびますが、香川県坂出市に建つ《東山魁夷館 せとうち美術館》も、それと同じく谷口吉生さんの設計です。1,000㎡に満たない小さな美術館ながら、寄贈を受けて270点ほどの作品を収蔵しているそう。

自然の中に映えるブルーグリーンの外壁材、水平に伸びる繊細な庇、そしてめくるめくシークエンスなど、谷口さんらしい設えや空間構成がぎゅっと詰め込まれた美術館。それと同時に、瀬戸内海に面する土地において、谷口さんが周囲の風景とどのように応答しようとしたのかが伝わってくる建築でした。
香川県立東山魁夷せとうち美術館
[所在地]香川県坂出市沙弥島字南通224-1
[用途]美術館
[設計]谷口建築設計研究所(建築・監理)
[施工]竹中工務店・坂出土建工業共同企業体(建築)
[竣工]2004年
[HP]https://www.pref.kagawa.lg.jp/higasiyamakaii/higashiyama/
[参考書籍等]
・『新建築2006年1月号』新建築社、2006
*詳細は以下でも書きました▼
旧香川県立体育館(閉館)|[設計]丹下健三

香川県庁舎と同じく丹下健三さんの設計で、「船の体育館」の名で親しまれてきた《香川県立体育館》。耐震性能の問題から2014年に閉館、残念ながら間もなく解体が予定されているようです。

訪れたときには既に立入禁止で、外観を眺めることしかできませんでしたが、ワッフルスラブにより大きく跳ね出した庇はそれだけで迫力大。内部にはダイナミックな空間が広がっているだけでなく、技術的にも様々な挑戦がなされていたようなので、閉館前に訪れられなかったことを残念に感じている建築のひとつです。
香川県立体育館(船の体育館)
[所在地]香川県高松市福岡町2丁目18-19
[用途]体育館
[設計]丹下健三(建築)
[竣工]1964年
丸亀市猪熊源一郎現代美術館|[設計]谷口建築設計研究所

丸亀駅南口のすぐ傍で、来館者を待ち構えているかのように堂々と建っている《丸亀市猪熊弦一郎現代美術館》。その名の通り、日本の現代美術家である猪熊弦一郎氏の作品を中心に、主に現代美術を収蔵する美術館です。

設計を手がけたのは猪熊氏とも親交のあった谷口吉生さんで、ランドスケープには谷口さんとよく協働しているピーター・ウォーカー氏も参加。巨大な門型からなる外観からもわかるように、先の《東山魁夷せとうち美術館》とは対照的な、とにかくダイナミックな建築です。

谷口さんはニューヨーク近代美術館(MoMA)の設計も手掛けていますが、《丸亀市猪熊源一郎美術館》は、その設計者を選定するコンペティションに誘われるきっかけにもなったんだそう*2。谷口さんが設計を手がけた美術館・博物館はいくつも訪れていますが、それらとの連関性を考える上でも、示唆に富む体験となりました。
*2:『十二組十三人の建築家 古谷誠章 対談集』(LIXIL出版発行,2014)より。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・丸亀市立図書館
[所在地]香川県丸亀市浜町80-1
[用途]美術館、図書館
[設計]谷口建築設計研究所(建築)
[施工]鹿島建設四国支店(建築)
[竣工]1991年
[HP]https://www.mimoca.jp
[参考書籍等]
・『新建築1992年7月号』新建築社、1992
・『十二組十三人の建築家 古谷誠章 対談集』LIXIL出版、2014
・『谷口吉生丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館: 建築を見る MIMOCA』彰国社、2001
・『私の履歴書─谷口吉生』淡交社、2019
*詳細は以下でも書きました▼
四国村ミウゼアム|[設計]空間構想、安藤忠雄建築研究所他

新旧の建物が建ち並ぶ、建築そのものを展示作品とした博物館《四国村ミウゼアム》。江戸時代に建てられた古民家に始まり、安藤忠雄さん設計のギャラリーや、川添善行さんの設計による《四国村エントランス おやねさん》も建っています。

博物館といっても大部分が屋外で、ピクニックのような気分にもなってくる施設。三次曲面の大屋根を木造で実現した《おやねさん》を始めとする個性的な建築群も魅力的ですが、個人的には、彫刻家の流政之氏による作庭が見られる点が貴重に感じました。
四国村ミウゼアム「おやねさん」
[所在地]香川県高松市屋島中町91
[用途]エントランス施設(展示室、事務所等)
[設計]空間構想(建築)
[施工]鹿島建設四国支店(建築)
[竣工]2022年
[HP]https://www.shikokumura.or.jp
四国村ギャラリー
[所在地]香川県高松市屋島中町91
[用途]ギャラリー
[設計]安藤忠雄建築研究所
[竣工]2002年
[HP]https://www.shikokumura.or.jp
[参考書籍等]
・『新建築2023年4月号』新建築社、2023
*詳細は以下でも書きました▼
屋島山上交流拠点施設 やしまーる|[設計]SUO+Style-A 設計共同企業体

史跡・天然記念物に指定されている屋島の山の上に建つ《屋島山上交流拠点施設 やしまーる》。展望台としての機能を主軸にしつつ、展示スペースや多目的ホール、カフェも備えた複合機能の建築。

設計を手がけたのは、日本を代表する建築家ユニットSANAAから独立した建築家、周防貴之さんを中心とするJV。うねるコンクリートスラブや透明かつミニマルなディテールの建築は、SANAA出身であることを彷彿とさせます。

2026年には、すぐ傍に建つ《れいがん茶屋》と合わせて建築学会賞作品賞を受賞したよう。そこで公表されている資料によれば、三次曲面の屋根やコンクリートスラブなどは、綿密な検討が重ねられて実現に至ったようです。
現代的な建築でありながら、歴史ある屋島の風景になじんで感じられたのは、地域産材である庵治石の活用と共に、細部まで徹底した検討が繰り返された結果なのかもしれません。
やしまーる
[所在地]香川県高松市屋島東町1784-6
[用途]ビジターセンター
[設計]SUO+Style-A 設計共同企業体(建築)
[施工]谷口・籔内特定建設工事共同企業体(建築)
[竣工]2022年
[HP]https://www.yashima-navi.jp/jp/yashimaru/
[参考書籍等]
・『新建築2022年9月号』新建築社、2022
*詳細は以下でも書きました▼
れいがん茶屋|[設計]SUO

先に挙げた《やしまーる》のすぐ隣、見晴らしのいい土地に建っている《れいがん茶屋》。こちらは周防貴之さん率いるSUO単独名義での設計で、《やしまーる》よりも1年ほど先に完成しています。

明治期に建てられた茶屋を改修し、カフェ兼店舗として生まれ変わらせた建築。既存建物の上屋を残すだけでなく、新たに整備した丘のような起伏を建物内にまで引き込んだ設えには驚かされました。
《やしまーる》の工事で排出された土を盛り土に活用していたり、互いにアイレベルがそろうように計画していたりと、二つの建築が関連性を持つ形で計画されているよう。合わせて立ち寄るのがおすすめの建築群でした。
れいがん茶屋
[所在地]香川県高松市屋島東町1784
[用途]店舗、飲食店
[設計]SUO(建築)
[施工]白崎工業(建築)
[竣工]2021年
[HP]https://reigan-chyaya.com/
[参考書籍等]
・『新建築2022年9月号』新建築社、2022
[参考]行ってみたい香川の建築
これまで何度も訪れている香川県ですが、開館日等の都合からまだまだ行けていない場所も多数あり。最近竣工したものも含め、今後訪れたい建築をピックアップしてみました。
あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)|[設計]SANAA

2024年の11月に竣工し、2025年にオープンしたばかりの《あなぶきアリーナ香川》。いわゆる県立体育館で、先に挙げた丹下健三さんが設計した《香川県立体育館》の後継にあたる建築です。

前回訪れたときはまだ工事中だったため、外から眺めることしかできず。2021年から2022年にかけて開催されていた東京のTOTOギャラリー・間での展覧会で見かけてから、どのように実現するのかずっと楽しみにしていたので、次回香川に足を運んだ際には必ず見に行きたいと思っています。
あなぶきアリーナ
[所在地]香川県高松市サンポート6-11
[用途]観覧場
[設計]SANAA、妹島和世建築設計事務所(建築)
[施工]大林・合田・菅特定建設工事共同企業体(建築)
[竣工]2024年
[HP]https://kagawa-arena.com/
[参考書籍等]
・『新建築2025年5月号』新建築社、2025
イサム・ノグチ庭園美術館|[設計]イサム・ノグチ

20世紀に活躍し、建築家とも多く協働した彫刻家、イサム・ノグチ氏の作品を展示する《イサム・ノグチ庭園美術館》。元々は彼がアトリエと住居を構えていた土地で、彫刻作品と共にそれらを残しつつ、調査研究のために公開されています。

完全予約制で、火・木・土曜日という限られた日程でのみ公開されている施設。交通の便もあまりよくなく、これまで訪れることができていなかったので、次こそは足を運びたいと思っています。
イサム・ノグチ庭園美術館
[所在地]香川県高松市牟礼町牟礼3519
[用途]美術館
[HP]http://www.isamunoguchi.or.jp/
[参考書籍等]
・『図録 イサム・ノグチ 発見の道』東京都美術館、朝日新聞社(編集)、朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション(発行)、2021
瀬戸内海歴史民俗資料館|[設計]山本忠司
香川県技師であった山本忠司さんの設計により、1973年に竣工した《瀬戸内海歴史民俗資料館》。県の技師が手がけた作品としては珍しく、日本建築学会の作品賞を受賞していて、2024年には国の重要文化財にも指定されました。
これだけでも興味を惹かれる建築ですが、設計を手がけた山本さんは、香川県庁では丹下健三さんとも協働したのだそう。安山岩が積まれたグスクのような外観が印象的ですが、丹下さんからの影響という観点でも、見所が多そうな気がしています。
公共交通機関のみだと高松駅から約2時間ほどかかる立地ですが、1970年代で重要文化財に指定されたものは現時点では他に見当たらないので、いつか足を運びたいと思っています。
瀬戸内海歴史民俗資料館
[所在地]香川県高松市亀水町1412番2
[用途]美術館
[設計]山本忠司(建築)
[竣工]1973年
[HP]https://www.pref.kagawa.lg.jp/kmuseum/setorekishi/index.html
[参考書籍等]
・文化遺産オンライン(URL:https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/608316)
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これまで訪れた建築のなかから行ってよかった建築を7点、これから足を運びたい建築を3点ピックアップしてみました。3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭など、香川県は訪れたくなるイベントが定期的に開催されるので、また近々出かけてきたいと思っています。




