長野|建築

軽井沢町の建築(軽井沢駅周辺編)

この記事では長野県の軽井沢町にある建築群を取り上げます。軽井沢町には著名な建築家のつくった建物が多く、一つの記事ではまとめきれないことから、立地しているエリア毎に4記事程度となる予定です。また、W.M.ヴォーリズの設計した建物についてもあまりにも数が多いことから、別途記事を作成する予定です。

 

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旧三笠ホテル 

(設計)岡田時太郎(竣工)1905年

(参考)https://www.town.karuizawa.lg.jp/www/sp/contents/1001000000964/index.html

 

国の重要文化財にも指定された歴史ある元宿泊施設で、東京駅の設計者である辰野金吾のもとで学んだ岡田時太郎の設計によるものです。既に宿泊施設としては使われていませんが、現在は軽井沢町が所有者となっており、一般の方も内部を見学することができます(但し、老朽化に伴い2024年まで保存補修工事中)。

1980年には既に重要文化財に指定されたこともあってか、内外はほぼ当初のままのようです。純西洋式と称されているだけあって、当時流行した様式と思われる装飾が各部分にみられます。 

 

軽井沢聖パウロカトリック教会

(設計)A.レーモンド(レーモンド建築設計事務所)(竣工)1935年

(参考)http://karuizawa-ginza.org/shop/stpaul_church/

DOCOMOMO JAPANにも選定されたA.レーモンドの設計によるカトリックの教会です。現在もミサ等が行われている他、私が訪ねたときには観光客と思われる方々で賑わっていました。全て木にするのではなく、杉板型枠コンクリート外壁の1階部分と木造の屋根部分とを庇の水平ラインで分割することで、プロポーションがより際立ってみえます。軽井沢を代表する名建築といってよいのではないでしょうか。

 

万平ホテル本館アルプス館

(設計)久米権九郎(竣工)1936年

(参考)https://www.mampei.co.jp/

 

久米設計の創立者である久米権九郎の設計による宿泊施設で、施主にあたる万平ホテルは日本における西洋式ホテルの草分け的存在のようです。現在は森トラストの傘下に入って運営されています。

100年以上前に建てられた建物ですが、公式サイトの写真をみると、ハーフティンバー様式の外観がほぼ変わらずに残されていることがわかります。内装にはおそらく相当手が入れられているでしょうが、客室は外観をオマージュしたかのように線状の木材を際立たせた意匠になっています。

2007年には近代化産業遺産、2018年には国の登録有形文化財に登録されています。

 

脇田美術館アトリエ

(設計)吉村順三(竣工)1970年

(参考)http://www.wakita-museum.com/

吉村順三氏の代表作として軽井沢の山荘が挙げられますが、同じ氏の設計によるもので元は別荘として建てられました。現在もたまに公開期間が設定されており、申込をすれば誰でも見学することができるようです。2021年には登録有形文化財になりました。

1階は鉄筋コンクリート造、2階は木造ですが、木造部分も線が少なく抽象度の高いディテールとなっていることで、構造の違いによる変化はほとんど感じませんでした。施主である脇田和氏の設計した美術館と合わせて中庭を取り囲むような配置となっています。

 

脇田美術館本館

(設計)脇田和(基本設計)鹿島建設株式会社(実施設計)(竣工)1991年

(参考)http://www.wakita-museum.com/

洋画家である脇田和氏の作品を主に収蔵する美術館で、基本設計は脇田氏自身が手がけています。脇田氏は2005年に亡くなってしまいましたが、現在も絵画に限らず建築のシンポジウムなど活発に行われているようです。

吉村順三氏の設計したアトリエと道路の間に建っていますが、円弧形状にしたのは中庭が囲まれている感じをより強調したかったのでしょうか。あるいは、道路側から円弧で引きこんだ先にアトリエが垣間見えるので、視線を導こうとしたのかもしれません。 

 

軽井沢大賀ホール

(設計)KAJIMA DESIGN(竣工)2004年

(参考)http://www.ohgahall.or.jp/

 

他にあまり見たことがない、正五角形の音楽ホール。持ち主は軽井沢町となっていますが、ソニーの元名誉会長である大賀氏に寄贈されたもののようです。音楽ホールは気積の大きな建物になってしまいがちですが、勾配屋根かつ屋根の面積が大きくみえるプロポーションになっていることで、軽井沢に建っていても違和感は感じないように思いました。

 

軽井沢ショッピングプラザ ニューイースト・ピッコラロトンダ

(設計)池原義郎建築設計事務所(竣工)2004年

(参考)http://www.karuizawa-psp.jp/

 

軽井沢駅のすぐ南にあるショッピングプラザで、同じ施設内のニューウエストも同じく池原さんの設計のようです。スチールフラットバーの網目に覆われた円形のピッコラロトンダには、2021年5月の時点ではリンツが入っていました。

建築家が設計した大型ショッピング施設は多くありませんが、池原氏の設計する大空間は気持ちよく感じるものが多いので、確かにこの用途にもあっているように思いました。

 

軽井沢ショッピングプラザ レストランアーティチョーク

(設計)柳澤孝彦+TAK建築研究所(竣工)2004年

(参考)http://www.karuizawa-psp.jp/

 

上記と同じく軽井沢ショッピングプラザの一部で、施設内に入ってすぐのところにあります。2021年5月時点ではフレンチビストロが入っていました。

外装や内装、屋根に三者三様のかたちでカラマツ材のラチスが用いられていますが、屋根を支えている中央のラチスには円形の木材がつかわれており、より土着的な印象を受けました。

 

軽井沢クリークガーデン

(設計)山本良介アトリエ(竣工)2005年

(参考)https://www.mielparque.jp/creekgarden/

 

木質構造を主体とする結婚式場。木質構造による大規模建築はいまでこそめずらしくなくなりましたが、当時はこれほど本格的なものは多くはないのではないでしょうか。チャペル上部の円弧形状の木質張弦梁が祭壇に向かって上昇しており、象徴性を強めようとしているのだと感じました。

結婚式場の多くは閉鎖的でなかなか近寄り難い印象がありますが、ここは通り沿いにカフェが併設されているなど、親しみやすい建物になっています。

 

軽井沢ニューアートミュージアム

(設計)西森事務所(西森陸雄)(竣工)2007年(建築)2012年(改修)

(参考)https://knam.jp/

戦後以降の美術を所蔵する美術館ですが、通り側に面してカフェレストランがが併設されているだけでなく、結婚式場としても使用することができるようです。

建物自体は元々2007年に商業施設としてつくられ、その後2012年に内装を改装して美術館となったようです。2009年に近くを通ったときにはがらんどうだったため何の建物かと思っていましたが、確かに商業施設よりも美術館のほうが建物の印象としてしっくりくる気がします。道路側の白い柱は軽井沢のカラマツ林をイメージしているとのことですが、個人的には構造にどの程度寄与しているのか気になりました。

 

ギャラリー桜の木軽井沢店

(設計)中村拓志&NAP建築設計事務所(竣工)2007年

(参考)https://www.sakuranoki.co.jp/

隈事務所OBの代表格の一人である中村拓志氏の初期作で、氏の作品の中でも個人的に好きなものの一つ。外観にもあらわれているアーチ形状が窓や扉、制気口など、様々な部分に展開されています。各室で内装にも変化がつけられており、小さいながらも色々な空間が楽しめます。

 

WORK×ation Site 軽井沢

(設計)田邉雄之建築設計事務所(竣工)2020年

(参考)https://workxation.mec.co.jp/

 

コロナ禍により話題となったワーケーションのための施設で、三菱地所が展開しているもののひとつ。WEBサイトから予約することで、誰でも使うことができるようです。どのように使う施設なのか個人的にはいまいちイメージができていませんが、昔でいう保養所のようなものなのでしょうか。増築と改修によりつくられており、2021年5月時点ではストリートビューで改修前の姿をみることができます。

 

 

今回取り上げた長野県北佐久郡軽井沢町の建築(軽井沢駅周辺編)は以上となります。情報や事実関係に誤り等ありましたら、お手数ですが問い合わせよりご一報頂けますと幸いです。